[りせたまて] 百地たまて : そんなこんなで、生徒会室を飛び出た二人。
[りせたまて] 百地たまて : 行くあてなんて、何も考えずに。
[りせたまて] 百地たまて : 普段過ごす学校を、とたとたと走り回る。
[りせたまて] 松本りせ : 猪突猛進、そんな勢いのたまてに乗せられるように。
[りせたまて] 百地たまて : 「………あ」
[りせたまて] 松本りせ : たったっ、とそれにつられていく。
[りせたまて] 百地たまて : ふと、窓の外を見て、呟く。
[りせたまて] 松本りせ : もちろん、手は繋いだまま。
[りせたまて] 松本りせ : これだけは絶対に離さないかのように。
[りせたまて] 松本りせ : 「......?」
[りせたまて] 松本りせ : たまての声に、足を止め、振り向き。
[りせたまて] 百地たまて : 「見てくださいりせ会長!!」
[りせたまて] 百地たまて : そう言い、窓の外を指差すと。
[りせたまて] 百地たまて : ちらほらと、雪が降り始めていた。
[りせたまて] 百地たまて : 「雪ですよ!雪ーー!!」
[りせたまて] 松本りせ : 「.........!」
[りせたまて]
松本りせ :
「......」
すごい...綺麗...
[りせたまて] 松本りせ : ぱぁ、と顔を輝かせ。
[りせたまて]
百地たまて :
何故かテンション上がるたまて。
この辺りでは……日常ではめったに見られないものでもあるためか。
[りせたまて] 松本りせ : 降り注ぐ、白い粉雪に目を奪われる。
[りせたまて] 百地たまて : 犬のように、はしゃぎたい気持ちが沸き上がっていく。
[りせたまて] 百地たまて : 「はいな!とっても綺麗、ですね!!」
[りせたまて] 百地たまて : そうして、その冷気により、校舎も冷え込んでいき。
[りせたまて]
松本りせ :
「………」
遊びたそうな目、してる
[りせたまて] 松本りせ : ぽへっと、たまての目を見ながら。
[りせたまて]
百地たまて :
りせと繋いだ手の力が少し、強くなる。
少しでも熱気を閉じ込めるように。
[りせたまて] 百地たまて : 「おや、そんな顔しておりましたか~?ふふふ~!バレバレでしたね!一本取られてしまいました!」
[りせたまて] 百地たまて : 「……とは言っても、ふぅ~む」
[りせたまて]
松本りせ :
「………ぁ……」
[りせたまて] 百地たまて : 「……?」
[りせたまて] 松本りせ : きゅっと握られた手が嬉しくなる。
[りせたまて] 松本りせ : つい、顔が俯き。
[りせたまて] 松本りせ : 両手で、また包み込んだ。
[りせたまて]
松本りせ :
「………」
私も、寒くなったから
[りせたまて] 百地たまて : 「あ………えへ、えへへ、ですね」
[りせたまて] 松本りせ : 目線は合わせずとも、思いは伝わって。
[りせたまて] 松本りせ : その事も、嬉しかった。
[りせたまて] 百地たまて : 「……こうも寒くなってきますと、なんと言いますか……寂しさが剥き出しになっちゃうような、そんな気持ちになりますよね」
[りせたまて] 百地たまて : 熱を奪われると、物は動かなくなる。
[りせたまて] 百地たまて : 白い雪は幻想的ながらも、エネルギーを奪うもの。
[りせたまて] 松本りせ : そんな物言いに、こくこくと頷き。
[りせたまて]
松本りせ :
「……」
でも
[りせたまて]
松本りせ :
「………」
二人だから、とびっきり”冷えたり”は、しない
[りせたまて] 百地たまて : 「………ふふ、そーですね」
[りせたまて] 百地たまて : にっこりと笑いながら。
[りせたまて] 松本りせ : ぎゅっと、熱を確かめるようにたまてへとにぎり。
[りせたまて] 松本りせ : ぴと。
[りせたまて] 百地たまて : 「ふぁ……」
[りせたまて] 松本りせ : 肩と肩を、くっつき合わせた。
[りせたまて] 百地たまて : ……な、何故でしょうか……。
[りせたまて] 百地たまて : りせ会長、普段よりも……なんだか、距離が近いような、そんな気が……。
[りせたまて] 松本りせ : ……とびっきり”寂しく”はない。
[りせたまて] 百地たまて : ………ドキ、ドキ、ドキ。
[りせたまて] 松本りせ : けど、寂しいわけでもない。
[りせたまて] 松本りせ : 雪が熱を奪うというなら、私は雪その物だ。
[りせたまて]
松本りせ :
だって、こんなにも。
温かさを求めてしまうんだから。
[りせたまて]
松本りせ :
「………」
やっぱり、たまては
[りせたまて]
松本りせ :
「……」
温かい…
[りせたまて]
百地たまて :
動かない、喋らない、それが雪だとすれば。
それは、確かにりせ会長そのものだ。
[りせたまて] 百地たまて : でも、私は、りせ会長を、"冷たい雪"だとは思わないですよ。
[りせたまて] 百地たまて : 「……りせ会長も、あったかいですよ、んへへ」
[りせたまて]
百地たまて :
温かい、1人の人間ですから!
……ロマンチックさの欠片もありませんけどね!
[りせたまて] 松本りせ : 「…………ん」
[りせたまて] 松本りせ : 小さな小さな声で、嬉しそうな声を、呟いた。
[りせたまて] 松本りせ : 今は放課後、人っ子も少ないそんな時期。
[りせたまて] 松本りせ : ただ窓に見える、降る雪を眺める少女二人。
[りせたまて] 松本りせ : そんな、絵になる光景はまさしく。
[りせたまて]
松本りせ :
イベントスチル
立派な”思い出”だ。
[りせたまて]
松本りせ :
「………」
……たまては
[りせたまて] 百地たまて : 「………はいな」
[りせたまて]
松本りせ :
「……」
…本当に、お別れなの?
[りせたまて] 松本りせ : きゅっと、手を握る力が強くなる。
[りせたまて] 百地たまて : 「っ……」
[りせたまて] 百地たまて : 触れてほしくなかった話題が、掘り下げられてしまった。
[りせたまて] 百地たまて : 私は、卒業の話から逃げるために、思い出作りを提案しました。
[りせたまて]
百地たまて :
だって、卒業の話をしちゃうと………。
………本当に、お別れが、近いんだな、って……。
[りせたまて] 百地たまて : 「………だって、りせ会長は……進学校に行っちゃう、ですよね……?」
[りせたまて] 松本りせ : 「………」
[りせたまて]
松本りせ :
こく、と。
小さく頷く
[りせたまて] 百地たまて : 「……私は、頭良くないですから、あはは……」
[りせたまて] 百地たまて : 「その辺の、お金のかからないそこそこの公立に進学するですから」
[りせたまて] 百地たまて : 「……お別れ、ですよ」
[りせたまて] 百地たまて : だんだんと、声が萎んでいくようで。
[りせたまて]
松本りせ :
…高校に入り、違う学校に行く。
たとえ中学で仲がどんなによかったとしても、離れた道は二人を分かつ。
[りせたまて] 松本りせ : いずれ、疎遠になる。
[りせたまて]
松本りせ :
……りせ自身が経験のあるわけではない。
爆発好きの親しいある先生がそう言っていた、から。
[りせたまて] 松本りせ : 「………」
[りせたまて]
松本りせ :
「……」
お別れ……
[りせたまて] 松本りせ : 「……………」
[りせたまて]
松本りせ :
「………」
私は
[りせたまて]
松本りせ :
「……」
したく、ない
[りせたまて] 百地たまて : 「っ………!!」
[りせたまて] 百地たまて : 聞こえない声に、胸がきゅぅ、と締め付けられるようだった。
[りせたまて] 松本りせ : たまての目を、じっと、見つめる。
[りせたまて] 百地たまて : そんなの……そんなの……。
[りせたまて] 百地たまて : 「……私も、ですよ……!!」
[りせたまて] 百地たまて : でも。
[りせたまて] 百地たまて : 「………でも……!!」
[りせたまて] 百地たまて :
[りせたまて] 百地たまて : 「そんなの無理じゃないですか……!!!」
[りせたまて] 百地たまて :
[りせたまて] 百地たまて : いつも陽気で、元気なたまての喉から。
[りせたまて] 百地たまて : 悲痛な叫びが、廊下に響く。
[りせたまて] 松本りせ : 「………っ」
[りせたまて] 松本りせ : その痛いほど、悲痛な叫びが、耳の中をこだまして。
[りせたまて]
松本りせ :
「………」
たま、て……
[りせたまて]
百地たまて :
自分が頑張れば、もっと、もっと頑張れば。
りせ会長と同じ場所に行けたはず。
[りせたまて] 百地たまて : だからこそ、悔しくて、悔しくて。
[りせたまて] 百地たまて : 涙が、少し滲んできた。
[りせたまて] 百地たまて : 「………あぅ……ご、ごめんなさいですよ……」
[りせたまて] 百地たまて : ごしごしと、もう片方の腕で、涙を擦り取り。
[りせたまて] 百地たまて : 「……んへへ」
[りせたまて] 百地たまて : 「……今の情けないですね、私」
[りせたまて]
松本りせ :
「………」
ただ、悲しそうな顔で向いて。
[りせたまて]
百地たまて :
・・・・・
「だって……ただの友達とお別れになるだけなのに……」
[りせたまて] 百地たまて : ズキン。
[りせたまて] 松本りせ : 「………!」
[りせたまて] 松本りせ : 「………ぅ」
[りせたまて] 百地たまて : 自分でも、そう言って、胸が締め付けられそうになり。
[りせたまて] 松本りせ : 友だち、その言葉を向けられたことに。
[りせたまて] 百地たまて : 「………高校に行けば、また新しい『友達』が、できるのに……」
[りせたまて] 松本りせ : …りせ自身もまた、強く、締め付けられて。
[りせたまて] 松本りせ : 「ぅ………ぁ…………」
[りせたまて] 百地たまて : 「……もう、この中学校で、他に会えなくなる人は、まだまだたくさんいて……」
[りせたまて] 松本りせ : 声にならない声が、漏れ始める。
[りせたまて] 百地たまて : 「……私の中では、踏ん切りはある程度ついていると言いますか……友達100人作ったら、当然その100人とのお別れもあるので……覚悟は、してるはずなんですけど……」
[りせたまて] 百地たまて : 「………ぁ……りせ、会長」
[りせたまて] 百地たまて : そんなりせの様子を見て、不安げな表情を見せる。
[りせたまて] 百地たまて : ……私は、この子とは、別れたくないな……なんて。
[りせたまて] 松本りせ : 「………」
[りせたまて] 百地たまて : そんな、我儘な想いが、ずっと心にあって。
[りせたまて] 松本りせ : そして、そのりせの顔には。
[りせたまて] 松本りせ : ……眉が上がり、頬を膨らませて。
[りせたまて] 松本りせ : 怒っていた。
[りせたまて] 松本りせ : 「……………」
[りせたまて] 松本りせ : 途端、ぐいと腕を引っ張って。
[りせたまて] 百地たまて : 「……ほへ」
[りせたまて] 松本りせ : ずんずんと、たまてを連れて、歩みを進めていく。
[りせたまて] 百地たまて : ただ茫然と、たまては、その場から動けず。
[りせたまて] 松本りせ : それを引っ張る様に、強情に、我儘に。
[りせたまて]
松本りせ :
ぐいぐいと、腕を、袖を引っ張る。
一生懸命に。
[りせたまて] 百地たまて : 「ぁ……え、えっと……なん、です、か……?」
[りせたまて]
松本りせ :
「…………」
いいから、来て
[りせたまて] 百地たまて : 「っ………」
[りせたまて] 松本りせ : その目は真っすぐで。
[りせたまて] 百地たまて : 「……どこに、です、か……?」
[りせたまて]
松本りせ :
「………」
忘れ物を、取りに
[りせたまて] 百地たまて : りせ会長が、今まで見たことない表情を見せているようで。
[りせたまて] 百地たまて : 今まで奥手だった彼女が、こんなアグレッシブに来ることに、ドギマギを隠し切れず。
[りせたまて] 百地たまて : 「……忘れ物……?」
[りせたまて]
松本りせ :
今まで、見せない顔で、そうつぶやく。
ぐっと、強みに。
[りせたまて] 百地たまて : 「生徒会室に、です、か………?」
[りせたまて] 松本りせ : こく、と頷き。
[りせたまて] 松本りせ : そしてまた、歩を進める。
[りせたまて] 松本りせ : 生徒会室は、近く。
[りせたまて] 百地たまて : ……えっと、一体、何を忘れ物にしたのでしょうか……。
[りせたまて]
百地たまて :
そんなことを思いながら、黙ったまま、彼女に連れていかれるまま。
成すがまま。
[りせたまて] 松本りせ : その中に躊躇なく入っていき、机の上にあるものを、探す、探す。
[りせたまて]
松本りせ :
……そして、2枚の紙を見つけ。
見比べた後、もう一つに何かを書く。
[りせたまて] 百地たまて : 「……?」
[りせたまて] 百地たまて : その紙を覗き込むように。
[りせたまて] 松本りせ : くるり、とその二つの紙を持ち、たまてに向ける。
[りせたまて]
松本りせ :
【進学高校希望書】氏名:百地たまて
第一志望:赤髪高等学校
[りせたまて] 松本りせ :
[りせたまて]
松本りせ :
【進学高校希望書】氏名:松本りせ
第一志望:×白髭高等学校 〇赤髪高等学校
[りせたまて] 松本りせ :
[りせたまて] 松本りせ : じっと、たまての目を見つめる。
[りせたまて] 百地たまて : 「ぇ………」
[りせたまて] 百地たまて : 目を見開いて、茫然とする。
[りせたまて] 百地たまて : 「……え……だって……りせ会長……え……?」
[りせたまて] 百地たまて : 口をパクパクとさせながら、2枚の紙を指差し。
[りせたまて] 百地たまて : 「……だって、進学校……行くんじゃ……」
[りせたまて]
松本りせ :
「………」
考えじゃ伝わらない、から
[りせたまて]
松本りせ :
「……」
行動で、示した
[りせたまて] 百地たまて : 「行動でって、そ、そんな……」
[りせたまて] 百地たまて : 「……りせ会長!!そんなの、良くないですよ!!!」
[りせたまて] 百地たまて : 「だって、だって!!」
[りせたまて]
松本りせ :
「………」
いいの、あそこに行けなくったって
[りせたまて] 百地たまて : 「進学校に行けたら、りせ会長はもっと色んな未来を、広い世界を、見れるはずなんですよ……!!」
[りせたまて] 百地たまて : 「い、いいって……そんな……」
[りせたまて] 百地たまて : 「……」
[りせたまて]
松本りせ :
「………」
そんなもの
[りせたまて] 百地たまて : 「……なん、で……?」
[りせたまて] 松本りせ : じっと、強い瞳で見つめる。
[りせたまて]
松本りせ :
「……」
たまてが一緒にいなければ、どんな未来だって
[りせたまて]
松本りせ :
「……」
狭いから
[りせたまて] 松本りせ : そう言って。
[りせたまて] 松本りせ : 熱を求める様に、雪が解け行くように。
[りせたまて] 松本りせ : たまてに、抱き着いた。
[りせたまて] 百地たまて : 「ぁ────────」
[りせたまて] 百地たまて : 自分よりも小さな少女に抱き着かれ。
[りせたまて] 百地たまて : 全身に、包まれる、温かさ。
[りせたまて] 百地たまて : 体だけじゃない
[りせたまて] 百地たまて : 心の奥そこからも、じんわりと……温もりが。
[りせたまて] 百地たまて : 「……り、せ……会、長……」
[りせたまて] 百地たまて : ぼろぼろと、涙が零れ落ちていく。
[りせたまて] 百地たまて : ……もう……本当に……。
[りせたまて] 松本りせ : ぎゅっと、その熱に溶かされていく。
[りせたまて] 松本りせ : 「………」
[りせたまて]
松本りせ :
にこ、と微笑んで。
指でその涙を掬っていく。
[りせたまて] 百地たまて : ────────あぁ……ふへへ、これが……。
[りせたまて] 松本りせ : ……私だって、離れたくない。
[りせたまて] 松本りせ : だから、もう、自分の意志で、離れない。
[りせたまて]
百地たまて :
イベントスチル
"思い出"────────なんですね……。
[りせたまて] 百地たまて : 「………ありがど、ぐすっ……ございまずぅ……りぜがいちょぉ……」
[りせたまて] 百地たまて : 「うえぇええぇぇぇ………!!」
[りせたまて] 百地たまて : 子どものように、泣きじゃくりながら、りせの体を抱き締める。
[りせたまて]
松本りせ :
「………」
そんな彼女に笑いかけたまま、背を伸ばし。
[りせたまて] 松本りせ : 頭を、なでなでと。
[りせたまて] 松本りせ : 泣きじゃくる子どもをあやすように、そう撫で続ける。
[りせたまて] 百地たまて : 「あぅ………んん……」
[りせたまて] 百地たまて : 心地よさそうに、目を細めながら。
[りせたまて] 百地たまて : 「………りせ、会長……じゃあ、じゃあ……私達……この先も、ずっと……」
[りせたまて] 百地たまて : 「……一緒……なん、です、か……?」
[りせたまて] 松本りせ : こく、と強く頷いて。
[りせたまて]
松本りせ :
「……」
ずっと、一緒
[りせたまて] 百地たまて : 「………ふへ、ふへへへ、えへへへへぇぇ」
[りせたまて] 百地たまて : だらしない笑いが、零れ落ちていく。
[りせたまて]
百地たまて :
「────────大好きです!!りせ会長~~~~!!」
今度は、たまての方から、抱き締める力を強め、押し返すように。
[りせたまて] 松本りせ : …寂しい、たまてといたい、温かくありたい。
[りせたまて] 松本りせ : その渇望が、今抱きしめられて、満たされていくのを感じる。
[りせたまて] 松本りせ : 「………ぁ…」
[りせたまて] 松本りせ : えへへへへ。
[りせたまて]
松本りせ :
にっこりと、抱き締める彼女の事が嬉しくて。
その優しい抱擁が、私にとって温かいものだと。
[りせたまて] 松本りせ : ────だから。
[りせたまて] 松本りせ : 少し背伸び、耳元に口をやり。
[りせたまて] 松本りせ : ねえ、たまて。
[りせたまて] 松本りせ :
[りせたまて] 松本りせ : 「好き」
[りせたまて] 松本りせ :
[りせたまて] 松本りせ : そう、呟いた。
[りせたまて] 百地たまて : ………へ。
[りせたまて] 百地たまて : ピクン、と体が跳ねる。
[りせたまて] 百地たまて : 耳の奥で反響する、りせ会長の"声"。
[りせたまて] 百地たまて : それは、たまてがいつも、感じ取っている"声"ではなく。
[りせたまて] 百地たまて : 肉声。
[りせたまて]
松本りせ :
動かない、喋らない、それが冷たい雪だとすれば。
それは、確かに私そのものではない。
[りせたまて] 松本りせ : ……こうして、動いて喋れたんだから。
[りせたまて] 松本りせ : 震えたたまてに、にこっと。
[りせたまて] 百地たまて : 「あぅっ………!?」
[りせたまて]
松本りせ :
目を細めて、はっきりと。
笑った。
[りせたまて] 百地たまて : 「ぁううぅぅ……ううぅぅぅ~~~~っ………!!!」
[りせたまて]
百地たまて :
雪を溶かしてしまいそうなほどの熱。
茹蛸のような顔に。
[りせたまて] 百地たまて : 湯気を漏らすように、呻きを漏らす。
[りせたまて]
百地たまて :
りせの、真っ直ぐな瞳を見て。
心臓がばくばくと鼓動。
[りせたまて]
松本りせ :
「………」
たまて、可愛い…
[りせたまて] 百地たまて : 「あうぅうぅっ……!?!」
[りせたまて] 百地たまて : 「な、も、もう!!」
[りせたまて] 百地たまて : 「そ、それ!!禁止です!!!」
[りせたまて] 松本りせ : 真っ赤になった彼女に、思わず心の声が漏れる。
[りせたまて] 松本りせ : それを読み取れるのも、たまてだけだけど。
[りせたまて] 松本りせ : 「………」
[りせたまて]
百地たまて :
「………そ、それなら……私、だって………」
拳を、キュッと、握り締め。
[りせたまて] 松本りせ : むーっとした顔になり、ほっぺを膨らませつつ。
[りせたまて] 松本りせ : 「………?」
[りせたまて] 百地たまて : りせの瞳を、じっと見て。
[りせたまて] 百地たまて : すぅー、と息を吸い!
[りせたまて] 松本りせ : きょとんとした顔になり。
[りせたまて] 百地たまて : 胸を大きく!
[りせたまて] 百地たまて : 仰け反り!
[りせたまて] 百地たまて : 「────────────────」
[りせたまて] 百地たまて :
[りせたまて] 百地たまて :
[りせたまて] 百地たまて :
[りせたまて] 百地たまて : 「……………好きです……」
[りせたまて] 百地たまて :
[りせたまて] 百地たまて :
[りせたまて] 百地たまて :
[りせたまて] 百地たまて : か細く、小さな声で
[りせたまて] 百地たまて : 顔を真っ赤っかにしながら、揺らめく瞳で、りせをじっと見ながら。
[りせたまて] 松本りせ : 「…………ほわ」
[りせたまて] 松本りせ : 小さな小さな声で、驚いて。
[りせたまて] 松本りせ : 「……ぁ、ぅ」
[りせたまて] 松本りせ : ………いつもの元気なたまての様子はなく、むしろその逆の、小さな小さな声。
[りせたまて] 松本りせ : それが、いつになく。
[りせたまて] 松本りせ : 心に響いた。
[りせたまて] 松本りせ : 「………」
[りせたまて] 松本りせ : 何も言えず、ただ顔が茹蛸みたいに真っ赤になって。
[りせたまて] 百地たまて : 「……ぁぅ……」
[りせたまて] 百地たまて : 「……な、なんか言ってくださいよー!ぷきー!」
[りせたまて] 松本りせ : 「………」
[りせたまて] 松本りせ : ぎゅっと、またしがみつく。
[りせたまて] 百地たまて : 「ふぁあっ……!?」
[りせたまて] 松本りせ : それが答えとでもいわん限りに、ぎゅっと。
[りせたまて] 百地たまて : 「あ……うぅぅぅ……」
[りせたまて] 百地たまて : もじもじと、縮こまるように。
[りせたまて] 百地たまて : 恥ずかしくて、恥ずかしくて。
[りせたまて] 百地たまて : でも……。
[りせたまて] 百地たまて : ……幸せで。
[りせたまて] 松本りせ : ……そう、幸せ。
[りせたまて]
松本りせ :
……ずっと、こうしていられるくらいに、幸せ。
[りせたまて] 松本りせ : 恥ずかしい、でも今はその熱さえも燃料にして、幸せの炎が燃え盛っている。
[りせたまて] 百地たまて : 2人切りの生徒会室の中で。
[りせたまて]
百地たまて :
燃え続ける、炎。"玉手箱"で覆って、冷たい外気から閉じ込めて。
今だけは、この誰もいない場所で、"理性"なんかも、忘れちゃって。
[りせたまて] 百地たまて : 二人の『愛』は、雪解け水となった。
[りせたまて]
松本りせ :
その水は、今もなお流れ出して。
【❤】マークを描きながら、こう綴るのだ。
[りせたまて]
松本りせ :
【Happy End】
[りせたまて]
松本りせ :
ハート
二人の”聞こえない声”は、確かにそう紡ぐ。
[りせたまて]
松本りせ :
ゲーム
けれど人生はまだまだ終わらない。
[りせたまて] 松本りせ : だって、うん
[りせたまて]
松本りせ :
回収できてない イベントスチル
まだ作れていない 思い出があるもの。
[りせたまて] 松本りせ :
[りせたまて] 松本りせ :
[りせたまて] 松本りせ :